食品業界において「HACCP」と「FSSC」という言葉は頻繁に登場しますが、実際にそれぞれの制度の違いや目的を正確に把握できている人は多くありません。特に、小規模な飲食店から大規模な製造業者まで、どの制度が自社にとって適しているのか判断するためには、それぞれの特性を知ることが必要です。本記事では、両者の違いをわかりやすく解説し、導入のためのステップも紹介します。
目次
- HACCPとは何か
- FSSCとは何か
- FSSCとHACCPの違い
- どちらを導入すべきか？
- まとめ
1. HACCPとは何か
HACCP（Hazard Analysis and Critical Control Point）は、食品の製造工程における危害要因（微生物汚染、異物混入、化学的リスクなど）を分析し、あらかじめリスクを予測・管理する手法です。特に食品の安全性を高めるため、製造ラインにおける重要管理点（CCP）を明確にし、連続的に監視・記録することが求められます。
2021年6月からは、日本国内のすべての食品事業者に対し、HACCPに沿った衛生管理の義務化が施行され、小規模事業者においても「HACCPの考え方に基づいた衛生管理」の導入が必要となりました。
2. FSSCとは何か
FSSC（Food Safety System Certification）は、ISO22000（食品安全マネジメントシステム）を基盤にした国際認証制度です。HACCPの考え方を内包しつつ、さらに広範なマネジメント要求事項、前提条件プログラム（PRP）、FSSC独自の追加要求事項が組み合わされています。
特に、輸出を考える食品製造業者や、大手企業と取引する中堅〜大規模の食品関連企業において、GFSI（国際食品安全イニシアチブ）承認規格としての信頼性が評価されており、海外市場での競争力を高めるための認証としても注目されています。
3. FSSCとHACCPの違い
HACCPとFSSCは似たような目的を持っていますが、制度設計の範囲と深さにおいて大きな違いがあります。
まずHACCPは衛生管理手法であり、業務の「現場」での管理に焦点が当たります。一方FSSCは、経営層から現場までを網羅した「マネジメントシステム」であり、企業としての食品安全文化の定着を重視します。
また、HACCPには取得認証は必要なく、自主的に記録・監査を行うものであるのに対し、FSSCは認証機関による定期的な審査と認証取得が必要です。このため、FSSCには一定のコストと準備期間が必要ですが、それだけ高い信頼性と国際的な競争力を得られるというメリットもあります。
4. どちらを導入すべきか？
選択のポイントは、「事業規模」と「事業展開の方向性」です。
飲食店や地域密着型の食品加工所など、小規模事業者にとっては、まずHACCPに沿った衛生管理を導入し、正しく運用することが基本となります。HACCPは、制度化されたとはいえ、実際の導入は柔軟性があり、実地に合わせて構築しやすい点が魅力です。
一方、取引先の企業から国際認証の取得を求められている場合や、輸出、OEM対応を予定している企業の場合は、FSSCの導入が重要なステップとなります。認証取得によって、信頼性が向上し、新たなビジネスチャンスの獲得にもつながります。
5. まとめ
HACCPとFSSCは、どちらも食品の安全を守るために不可欠な仕組みですが、その役割とスコープには明確な違いがあります。HACCPは衛生管理の基本、FSSCはグローバル競争に勝つための品質保証の武器といえるでしょう。
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