HACCPの衛生管理 ~その合理的な方法と衛生意識の向上について~

いつの時代も食の安心、安全は提供者の課題となってきました。食の安全性は食品を提供する企業の命ともいえるものです。近年、HACCP(ハサップ)の衛生管理の必要性が唱えられるようになりました。ここではその衛生管理について一緒に見ていきたいと思います。

HACCPの仕組みと歴史

Hazard Analysis and Critical Control Point の頭文字をとって、HACCPと言います。翻訳すると”危害要因分析重要管理点”という意味になります。

HACCPによる衛生の管理については、それぞれの原料の受け入れに始まり、製造、製品の出荷に至る工程のすべてにおいて、健康被害のもととなる危害要因(Hazard )を科学的な根拠に基づいた管理によって取り除くことです。

危害要因(Hazard )は病原微生物などの生物的な面や、抗生物質、残留農薬などの化学的な面、ガラス片などの物理的な面に分けて、全工程において精査、低減し、取り除くために必要な管理方法を設定します。

特に厳しく管理する必要がある工程においては、管理するための基準を設定し、連続的に確認を行います。また、基準をじゅうぶんに満たしているかを確認し、必要に応じて改善していくことがHACCPの特徴と言えます。

HACCPは1963年にFAO及びWHOにより設置された国際的な政府間機関であるコーデックス委員会によって、1993年に食品衛生においての一般原則の一部として発表されました。日本では1995年にHACCPによる衛生管理がスタートしました。

従来方法との違い

従来行われてきた多くの衛生管理は、製品製造にかかわる施設、食品や設備への取扱い方法等を決めて、最終的に製品が規定している基準を満たしているか検査を行うものでした。

一方、HACCPに基づく衛生管理では、プロセスごとにあらかじめリスクファクターを分析し、特に重要なプロセスを重点的にチェックし、最終製品が安全であることを明らかにしていくものです。

HACCPのメリット

HACCPは、現在、合理的な衛生管理法として国際的に認められています。HACCPを導入済みもしくは一部導入している、食品または添加物の製造業の施設、仕出し屋、弁当屋、給食施設8,406件を対象にしたアンケートが行われていますが、結果は以下の通りです(厚生労働省実施)。

衛生管理に対して社員の意識が向上した。:78.2%
自社の衛生管理について根拠を持って社外にアピールできるようになった。:43.1%
製品にエラーが生じた場合のリカバリーを迅速に行えるようになった。:37.7%
事故、クレームが減った。:32.3%
HACCP導入のニーズに応え、事業者との取引先が増えた。:9.7%

特筆すべきことは、「社員の衛生管理に対する意識が向上した」という点です。HACCPの導入には、専門知識を持つ人でチームを組む必要があるため、社員の意識と技術の向上が見込めるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。従来方式に比べ、HACCPの衛生管理法は科学的かつ合理的な方法であるばかりでなく、社員の衛生意識の向上にもつながる大切なものだということをご理解いただけたかと思います。